2023年11月

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【ネタバレなし】『夏への扉』ロバート・A・ハインライン|読書感想・レビュー

※ネタバレしてないというのは僕の判断です。完全にストーリーに触れずに書評を書くのが難しいのである程度は触れます。すみませんが、ご了承ください。   普段僕は自己啓発書やビジネス書などの実際に役に立ちそうな本ばかり読んでいます。 しかし岡田斗司夫さんが『経営者はSFを読まないとダメだ!』という趣旨の発言をされていたことと、 仕事が落ち着いてゆっくり小説を読める時間ができたことから、普段はあまり読まないSF小説にトライしてみました。   仕事は落ち着いてきたとはいえ、本を読める時間は限られています。 本選びをミスってしまった時の、時間の浪費感はできるだけ感じずに生きていきたいものです。 こういう場合、徹底的にネットで調べることが一番手っ取り早いと思ってます。   ネットで入念に調査を行った結果、SF初心者にも優しい古典的名著として本書『夏への扉』がよく挙げられていました。 Amazonのレビューもよかったので、この本をチョイスしました。   SF小説『夏への扉』のざっくり感想(ネタバレなし)   ざっくりとネタバレしない程度に感想をまとめると、この『夏への扉』という本は、『三体』や『新世界より』などのように世界観が壮大で寝食を忘れて没入してしまうような悪魔的な魅力を放つ本ではなかったですが、 一方で、登場人物の人間的な魅力が丁寧な心理描写で描かれていて、読んでいてワクワクしつつも心が温まるという珍しいタイプの本だと思いました。   この本の主人公は、アメリカの優秀なエンジニアであり発明家で、自身の作り出した装置で起業して巨万の富を築きます。 その過程の丁寧な心理描写で、技術的な創作への熱意がひしひしと伝わってきます。 僕自身、ITエンジニアとして起業して自分のサービスを作り出したいと強い野望を抱いているので、その点は非常に共感しました。 一方で起業したものの経営スキルや対人スキルに長けた周りの人間にいいように弄ばれてしまう過程など、自分の人生にとっても役立ちそうで、非常に勉強になりました。   こういった小説の本筋から外れた部分が印象に残っているため、この本のSF的な展開にそこまで魅入られていないということなのかもしれません。   この本の原作は1956年に発売されています。 そして小説の舞台は、当時の未来であり、現在から見ると過去の、1970年や2000年だったりするので、実際にその時代を体験した世代が読むのは、少し違和感があるのかもしれません。 また原作発売当時から時代が過ぎ去る中で、数多のSF小説が登場し、SFのストーリー展開に関する研究や技術発展が進む中で、『三体』や『新世界より』と比べてしまうと見劣りしてしまう部分もあるのは自然なことだと思いました。   SF初心者が、どっぷりとSFの世界にハマってみたいのであれば、この本はあまりお勧めしません。 あくまでもSFに慣れ親しんだベテランが、古き良き名著に触れて、ヴィンテージワインを味わうかのような楽しみ方をするのであれば、うってつけなのでしょう。 僕にはまだ早かったということです。   いくつか、自分にグッと刺さったフレーズを載せておきます。   SF小説『夏への扉』で気に入った表現   そしておよそ世の中には、掃除しなくてよい床など、あるはずがないのだ。 ロバート A ハインライン. 夏への扉〔新版〕 (Japanese Edition) (p.39). Kindle 版. 独特の表現ですね。他ではあまりお目にかかれない、面白い表現だと思います。 この発言者に対して、反例として「廃墟」を挙げたらどういう反論を喰らうのか、少し興味が湧きました。   猫がこうした声を出すのは、深い悲しみに胸をえぐられたとき──耐えられぬ悲しみに胸ふさがれながら、それをどうする力もないことを覚ったときに限られているのだ。 ロバート A ハインライン. 夏への扉〔新版〕…