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【ネタバレなし】『夏への扉』ロバート・A・ハインライン|読書感想・レビュー

※ネタバレしてないというのは僕の判断です。完全にストーリーに触れずに書評を書くのが難しいのである程度は触れます。すみませんが、ご了承ください。   普段僕は自己啓発書やビジネス書などの実際に役に立ちそうな本ばかり読んでいます。 しかし岡田斗司夫さんが『経営者はSFを読まないとダメだ!』という趣旨の発言をされていたことと、 仕事が落ち着いてゆっくり小説を読める時間ができたことから、普段はあまり読まないSF小説にトライしてみました。   仕事は落ち着いてきたとはいえ、本を読める時間は限られています。 本選びをミスってしまった時の、時間の浪費感はできるだけ感じずに生きていきたいものです。 こういう場合、徹底的にネットで調べることが一番手っ取り早いと思ってます。   ネットで入念に調査を行った結果、SF初心者にも優しい古典的名著として本書『夏への扉』がよく挙げられていました。 Amazonのレビューもよかったので、この本をチョイスしました。   SF小説『夏への扉』のざっくり感想(ネタバレなし)   ざっくりとネタバレしない程度に感想をまとめると、この『夏への扉』という本は、『三体』や『新世界より』などのように世界観が壮大で寝食を忘れて没入してしまうような悪魔的な魅力を放つ本ではなかったですが、 一方で、登場人物の人間的な魅力が丁寧な心理描写で描かれていて、読んでいてワクワクしつつも心が温まるという珍しいタイプの本だと思いました。   この本の主人公は、アメリカの優秀なエンジニアであり発明家で、自身の作り出した装置で起業して巨万の富を築きます。 その過程の丁寧な心理描写で、技術的な創作への熱意がひしひしと伝わってきます。 僕自身、ITエンジニアとして起業して自分のサービスを作り出したいと強い野望を抱いているので、その点は非常に共感しました。 一方で起業したものの経営スキルや対人スキルに長けた周りの人間にいいように弄ばれてしまう過程など、自分の人生にとっても役立ちそうで、非常に勉強になりました。   こういった小説の本筋から外れた部分が印象に残っているため、この本のSF的な展開にそこまで魅入られていないということなのかもしれません。   この本の原作は1956年に発売されています。 そして小説の舞台は、当時の未来であり、現在から見ると過去の、1970年や2000年だったりするので、実際にその時代を体験した世代が読むのは、少し違和感があるのかもしれません。 また原作発売当時から時代が過ぎ去る中で、数多のSF小説が登場し、SFのストーリー展開に関する研究や技術発展が進む中で、『三体』や『新世界より』と比べてしまうと見劣りしてしまう部分もあるのは自然なことだと思いました。   SF初心者が、どっぷりとSFの世界にハマってみたいのであれば、この本はあまりお勧めしません。 あくまでもSFに慣れ親しんだベテランが、古き良き名著に触れて、ヴィンテージワインを味わうかのような楽しみ方をするのであれば、うってつけなのでしょう。 僕にはまだ早かったということです。   いくつか、自分にグッと刺さったフレーズを載せておきます。   SF小説『夏への扉』で気に入った表現   そしておよそ世の中には、掃除しなくてよい床など、あるはずがないのだ。 ロバート A ハインライン. 夏への扉〔新版〕 (Japanese Edition) (p.39). Kindle 版. 独特の表現ですね。他ではあまりお目にかかれない、面白い表現だと思います。 この発言者に対して、反例として「廃墟」を挙げたらどういう反論を喰らうのか、少し興味が湧きました。   猫がこうした声を出すのは、深い悲しみに胸をえぐられたとき──耐えられぬ悲しみに胸ふさがれながら、それをどうする力もないことを覚ったときに限られているのだ。 ロバート A ハインライン. 夏への扉〔新版〕…

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知る人ぞ知る「超」良書に出会いました|『自分を鍛える!』ジョン・トッド|読書感想・レビュー

普段大体一週間に1冊くらいのペースで本を読んでいる僕だが、久々に自分にとって非常に有益な本に出会ったので紹介したい。 200年以上前にアメリカ政府の大臣であったジョン・トッド氏によって書かれた「自分を鍛える!―――「知的トレーニング」生活の方法」という本だ。 自己啓発書をたくさん読んできた僕は、自己啓発書でたくさんの精神論を学んできた。 しかしこの本は、非常に実践的で具体的な、人生をよりよくするためのアドバイスに満ちていた。 しかもそのアドバイスが、ともすると忘れがちなことばかりで、今の自分が実践できていないことが多かった。 この本の出版社から広告費を1円ももらっていないが、この本を読んだ直後から生活スタイルが大幅に変わって、非常に充実した毎日を送れるようになったので、この本の内容をみなさまに紹介したい。 この本全体を通して非常に学ぶ点が多かったが、この記事では本の要約をするつもりはなく、あくまでもこの本の中で「僕に刺さった箇所」を中心に紹介したいと思う。 僕はそこまで奇人でも常識はずれでもないはず、と自負しているので、おそらく大抵の人にも同じように刺さる内容だろう。 興味を持ったら、ぜひAmazonでポチってみて欲しい。あまりにも費用対効果の高い買い物となることだろう。 では、さっそく紹介していく! 書籍「自分を鍛える」の見どころ①:起きる時間の遅い人間でひとかどの人物になった者など一人もいない 僕はこの本を読むまで、深夜まで仕事に打ち込んで、午前1:00ごろに就寝し、朝は9時すぎに目を覚ますような生活をしていた。 恥ずかしながら、当たり前にこの習慣を繰り返してきた。 今思い返せば学生時代から寝坊も多かったし、とにかく朝に弱い人間だった。自然と、自分は夜型人間だと自認する形になり、朝寝をすることに抵抗感など全くなくなっていた。   が、しかし。 この本を読んで、(2つの意味で)目が覚めた。 著者は、引用を交えつつ以下のように主張する。この本の中で、一番刺さった内容かもしれない。 早起きを習慣としなかった人で長生きした人は少なく、まして有名になった人となるとさらに少ない。起きるのが遅くなると、当然仕事にとりかかるのも遅くなり、結局、その日全体が狂ってしまう。ベンジャミン・フランクリン(1706―90。アメリカ合衆国の政治家、著述家、物理学者。〝アメリカ建国の父〟とされる)は言っている。「寝坊しがちな人間は、一日中あたふたし、夜になってもまだ仕事が山積みになっている」。『ガリヴァー旅行記』の著者スウィフトは、「朝寝をする人間でひとかどの人物になった者など一人もいない」と断言している。現代はいろいろな点で堕落しているが、寝坊がその最たるものであることは、他の堕落とともに、歴史が証明してくれるものと思う ジョン・トッド. 自分を鍛える!「知的トレーニング」生活の方法 (Japanese Edition) (p.38). Kindle 版.   若い時から早起きの習慣をつけている人は長生きするという傾向があり、そういう人は卓越した有能な人物になる場合が多い。そして何よりも、おだやかな楽しい人生を送れるものだ。私がこの点を強調するのは、寝床を恋しがるというのは特に若い人がおちいりやすい過ちであり、いったんこの癖がつくと容易なことでは抜け出せなくなってしまうからである ジョン・トッド. 自分を鍛える!「知的トレーニング」生活の方法 (Japanese Edition) (p.41). Kindle 版.   ここまで断言されると、「自分は夜型人間なので…」と言い訳する気も失せてくる。 しのごの言わずに、起きて、やれ。Do it!   かつての偉人に、叱られたような気分になった。   大人になると、あまり叱ってくれる人はいない。会社の上司がストレス発散のためではなく自分のためを思って叱ってくれるのであれば、ある意味そのひとは大変恵まれているだろう。自分を客観的にみて、矯正してくれる人がいるからだ。 だが大抵の人はそうではない。大人になれば、相手に指摘をして反感を買うことの恐ろしさやデメリットをおおいに理解できるので、自然と人は対立を避けるようになる。 自分の悪い部分をしっかり指摘してくれる人なんてまずいない。   その前提に立てば、自分から能動的に説教を受けにいく必要がある。 でもだれかに「僕を叱ってください!」なんて言ったら気持ち悪すぎて社会的信用が地の果てまで落ちるので、本を読んで積極的に偉人の教えを学んでいくことが大変に重要である。   話がそれたが、その観点に立てば、おそらく「朝ちゃんと早起きをすること」というのは、守らなければならない人生訓なのだろう。 周りの人間はだれも教えてくれないが、ジョントッドが教えてくれている。   この日を境に僕は毎日朝の7時に起きるようになった。 本一冊で、生活がここまでドラスティックに変化するなんて、久々の体験だ。 この一節だけでも、この本は自分の人生をよくしてくれたと言える。…

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自己嫌悪に満ちてひねくれた人間が内省を繰り返して成熟していくストーリー -『ナナメの夕暮れ(若林 正恭 著)』を読んで-

お笑いコンビ「オードリー」のツッコミ、若林氏の書籍「ナナメの夕暮れ」を読んだ。 若林氏は過去に数回書籍を出版しているようだが、今回僕は彼の著書を初めて読んだ。   この本を読むまで僕は、若林氏をテレビで見かけたときに、「同族嫌悪」のようなものをうっすら感じていた。 (正直、同じような感覚をフットボールアワーの後藤さんにも抱いている・・・) きつい言い方になるが、僕から見た若林氏は「空気を読み過ぎた結果当たり障りのないことしか言えない人間なのに、自己認識や自分の理想像はもっと高くて、現実の自分を受け入れられず苦しんでいる」ように感じられていた。 そして他でもない僕自身も、同じような面があるからこそ、同族嫌悪を感じているのだ。 しかし、この本を読んだ後、若林氏への見方が大幅に変わった。   若林氏も、彼自信のかつてのその欠点に気づいているどころか、その欠点に苦しみ、考え抜いてなんとかご自身なりに折り合いをつけてきたのだ。 その折り合いの付け方が、非常に含蓄に富むもので、共感するとともにたくさん学ぶことができた。 非常に良書だった。   引用しつつ、本の感想を綴っていこうと思う。 自分の意見がなく、他人に合わせるだけだった過去の若林氏 若林氏は若い頃の自分について、 他人の意見や考えに自分を合わせ続けた結果、自分が何をしたいかよくわからなくなっていた と分析している。 具体的には以下の記述があった。 なぜ、幼稚園の時に正直に「バスの運転手になりたい」と言えなかったのか。なぜ、小学生の時にバットが当たらず、且つ球が取り易い位置に自然にキャッチャーミットを構えなかったのか。他人の正解に自分の言動や行動を置きに行くことを続けると、自分の正解が段々わからなくなる。バスの運転手になりたいのかどうかがよくわからなくなるのだ。 (中略) 他人の正解に置きに行くと、例えばその場に人数が多い時に、どの人の正解に置きに行っていいかわからなくなり、キョロキョロおどおどすることになる 若林 正恭. ナナメの夕暮れ (Japanese Edition) (pp.22-23). Kindle 版.   これは僕にも似た経験があり、ものすごく刺さった。 僕も基本的に自分の考えというものをあまりもっておらず、なんとなく声の大きい人の意見に従って生きてきた。 仮に自分の意見が多少あったとしても、他人の意見の方がそれっぽく聞こえていた。 たまの機会に自分の意見を言おうにも、自分の言葉ではなく、過去に聞き齧った他の誰かの言葉でしか語れなかった。   そうなってしまった原因はいくつかあるだろう。   まずは、言語化能力の低さ。 自分の気持ち、感情、意見、考え、というものがぼんやりとあっても、それをうまく言葉にできないから、なんとなくもやーっとしたイメージだけはあるものの明確な意思として現れてくることがなく、結局何も意見がないのと同じ振る舞いになってしまう。   次に、自分の意思を表明した頻度の少なさ。 例えば小さい頃に親や友人に意思を表明しても受け入れられなかったり、頭ごなしに怒られたりして、自分を表現することを徐々に恐れていったひとは、ますます自分を表現しなくなってしまう。その積み重ねが他人に付和雷同する性格を作り上げていった可能性がある。   学生時代であれば、他人に同調するだけでも生きていけるが、社会に出ると大抵の人は意見が求められるようになる。 学生時代の友人などに久々に会うと、あまり主張の激しくなかった人もはっきりと意見を表明するように変化していたりするので、案外みんな社会に出てからこの課題を克服していくものなのかもしれない。 僕もブログなどを通して、意見をはっきり表明できるトレーニングをしているわけで。   自分の気持ちを言語化した上で、勇気を持って相手にうまく伝えるというのは、気持ちよく楽しく人生を送るには必要なスキルですね。   テレビに映る自分を見て嫌悪感を感じていた若林氏 若林氏は自分自身の振る舞いに強烈な嫌悪感を抱いているようだ。 本の中に以下の文がある。 いろいろなことに心を配りながら話しているテレビの中の自分の顔を見ていると吐き気がするからだ。心身の調子のいい日に、部屋にあるエアロバイクを猛スピードで漕ぎながら一気に見ることにしている。 若林…

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確固たる自己肯定感を手に入れたい方へ『鋼の自己肯定感』宮崎直子|読書感想・レビュー

どうも、ITエンジニア兼経営者のみりお(@Mirio730)です。 先日『鋼の自己肯定感 ~「最先端の研究結果×シリコンバレーの習慣」から開発された“二度と下がらない”方法』を読んで新しい学びがあったので読者の方にも共有します。   『鋼の自己肯定感』で得られた大きな学び 自己肯定感とは「無条件に」自分を愛することである 自己肯定感を高めるためには根拠や理由がいらない、つまり、考え方次第(決意次第)で自己肯定感を高めることができる 『鋼の自己肯定感』の注目フレーズ 筆者が定義する自己肯定感について 自己肯定感が高いとは、ありのままの自分を〝無条件で〟受け入れ愛している状態 宮崎直子. 鋼の自己肯定感 ~「最先端の研究結果×シリコンバレーの習慣」から開発された二度と下がらない方法 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.20-21). Kindle 版.   自己肯定感とは、何があっても自分の味方でいること 宮崎直子. 鋼の自己肯定感 ~「最先端の研究結果×シリコンバレーの習慣」から開発された二度と下がらない方法 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.27). Kindle 版.   自己肯定感は上がったり下がったりするものではない。ずっと上がったままにできるものである 宮崎直子. 鋼の自己肯定感 ~「最先端の研究結果×シリコンバレーの習慣」から開発された二度と下がらない方法 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.28-29). Kindle 版.   自己肯定感という言葉って、意味が漠然としていて掴みづらくないでしょうか。 筆者は上述の通り定義しています。 「無条件で」自分を愛することが、この本の一貫したポイントになります。 日本人の自己肯定感の低さ 2017年に国立青少年教育振興機構が、高校生を対象にした調査にこんなデータがある。「自分は価値のある人間だと思う」という問いに84%のアメリカの高校生がイエスと答えたのに対し、イエスと答えた日本の高校生は45%にとどまった 宮崎直子. 鋼の自己肯定感 ~「最先端の研究結果×シリコンバレーの習慣」から開発された二度と下がらない方法 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.75-78). Kindle…